組織変革の「時」に迫る、ドキュメンタリー形式のイベント「THE TRANSITION」。
8月6日(木)は同シーズンの特別篇としてAll Personal社との共催で、「組織と100人の壁の回顧録」を開催しました。ご参加いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
当日は、同社代表の堀尾さんと、ガイアックス社で人事責任者を務める流さんの2名をゲストにお迎えし、「100人の壁」の突破法についてお伺いしました。
講演中には、多くの方からチャット欄にてご質問を頂戴しましたが、時間内に全てお答えすることができなかったため、こちらのブログにて回答させていただきます!
※質問文は、一部を読みやすく編集させていただいております。
【目次】
ベンチャーやスタートアップ企業では、ある特定の従業員数を迎えるときに「組織が壊れやすくなる」といわれています。それがいわゆる、「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」と呼ばれるものです。
組織がまだ小規模な時は、経営層から従業員一人ひとりの顔が見え、多くを語らずとも意思疎通が可能なもの。
しかし、そのまま組織が拡大し続けると、マネジメントが破綻していきます。
では、「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」がどのようなものか順番に説明していきます。
社員数が30人を超えてくると、「代表のメッセージ」をメンバー全員に行き届かせることが難しくなり、社長1人でマネジメントすることが難しくなります。そこで、社長の属人的な経営から役割分担・仕組み化が必要となり、「30人の壁」と呼ばれる課題に直面します。
②50人の壁
組織が50人を迎える頃は、ピラミッド型の階層が深くなり、事業部長が就任するなどの「権限移譲」が進んでいる段階です。引き続き、代表が意思決定を行う一方、マネージャーがそのメッセージを現場に伝えていく必要が生じるので個々人のマネジメント力が問われます。
さらにこの頃から、現場で経験を積むエース的社員が現れる可能性があり、場合によってはマネージャーよりも多くの知識や現場感をもつこともあります。そうすると、自分で意思決定を行うべきか? あるいは階層によるルールに従うべきか? など、意思決定が曖昧になるという問題も生じます。こうした課題が生じるのが「50人の壁」です。
③100人の壁
さらに組織が拡大し、100人を迎える頃には制度として整備しなければならないことが爆発的に増えます。この整備に加えて、階層が増えるごとに中間管理職も増え続けるので、育成が追いついていないマネジメント力の低い人材が就任せざるをえなくなります。
その結果、会社のビジョンが見えにくくなり、他の人の仕事が「他人事」となってしまい、組織文化が崩壊、さらにエースが転職といったことも生じかねません。こうした状況が「100人の壁」といわれています。
▼こちらのebookでは成長企業に立ちはだかる「壁」を突破するためのヒントを図解でわかりやすく解説しております。「組織の拡大に伴う課題を解決するヒントを知りたい」「組織のパフォーマンスを高めるために必要なマネジメント方法を知りたい」という方は是非ご参考ください。
Q:「100人の壁」を乗り越えた先は、どのような「壁」が待ち受けているのでしょうか?
「100人の壁」を乗り越えた先に待ち受ける「壁」を説明した理論としては、「5段階成長企業モデル」が有名でしょう。
「5段階企業成長モデル」とは、ラリー・E・グレイナーが1979年にハーバード・ビジネス・レビューで発表した理論で、組織の拡大に伴って生じる5つの「危機」を示したものです。
その「危機」とは、以下の5つとされています。
第3段階以降で生じる危機が、おそらく「100人の壁」を突破した先に待ち受ける「壁」だと思われます。
第3段階では権限委譲や業務分担が進んだ結果、業務間の断絶が生じ、組織全体のコントロールが難しくなるとされています。
第4段階では、意思決定における手続きが重んじられる結果、組織全体の成長スピードが減速してしまうという課題が生じます。日本の大企業や、ある程度ビジネスモデルが確立されたメガベンチャーではこうした問題が生じやすいといわれています。
そして最後の第5段階で生じる危機は「新しい危機」と記されているわけですが、つまり、組織はいつまでも「壁」にぶつかり続けるということです。ただし、「壁」はあくまでも企業の「成長痛」ですので、あるべくしてあるものだと割り切ることも必要です。
ただし、同じような課題に何度も直面する場合は、根本的な解決に至っていないということなので、課題を正確に把握し、慎重に体制を整えていくのが良いでしょう。
Q:「組織がうまく機能していない…」と思ったら、何から始めると良いですか?
そもそも、組織がうまく機能していない理由はなんでしょうか? その理由が明確になっていないのであれば、まずは課題を探し、特定することが必要です。また、課題を特定するのと同時に、組織のあるべき姿(理想)も明確にしなければなりません。
組織がうまくいってない背景には、多くの問題が複合的に絡み合っています。優秀な人材が辞めてしまったり、メンバーのエンゲージメントが低くなってしまうなど、顕在化している問題に対して、その原因は何なのか? を見極め、解決までの道筋を明確にすることが必要でしょう。
マッキンゼーが提唱するフレームワーク「7S」のような組織変革のフレームワークを使うと、課題の整理がしやすいと思います。
【ハードのS】
【ソフトのS】
参考記事:マッキンゼーが提唱する組織変革のフレームワーク「7S」- Salesforce
Q:長らく変化がない組織を前進させるために必要なことは何でしょうか?
そもそも、長期的に変化のない組織を変化させる必要があるのか? ということを考える必要があると思います。
長期的に変化がなかったことによって、組織に問題や歪みが生じているならば、その歪みの原因は何か? を特定しましょう。
原因が特定できたら、問題解決のためには何が必要か? どのような方向を目指すか? 水準を目指すか? フォーカスはどこにするか? を明確にし「組織のフェーズ」に合わせて理想のかたちを模索していく必要があります。
また、組織に変化を起こす際には、はじめから大きな改革を目指すのではなく、「小さな変化」を促すことをおすすめします。変化を起こしながら、メンバーの声やフィードバックを元に試行錯誤していくことが重要です。
Q:エンゲージメントの向上は大事だと理解しながら、効果が出るまでに時間がかかるものだと認識しています。実際にエンゲージメントを向上させ業績につなげるまでには、どのくらいの時間が必要なのでしょうか?
エンゲージメントが業績に与えるインパクトとしては、離職率の低下、従業員の生産性向上、採用費の減少などが考えられます。
しかしご指摘の通り、エンゲージメントの向上から業績アップまでにかかる時間は、組織の規模、事業内容、カルチャー等によって大きく異なります。
組織を構成する要素の中で、システムや制度といった「ハード」は比較的変更が容易であるのに対し、ピープルマネジメントやエンゲージメントといった「ソフト」は変更に時間がかかるとされています。
その中で、なるべく早く成果をあげるためには、目標設定→フィードバック(評価)のサイクルを高頻度にすることが必要です。このサイクルが長いスパン(1年に一度など)で設定されていると、それだけ成果が出るのも遅くなります。
例えばAdobe社では、継続的な面談を通じて上司と部下のリレーションシップを構築する新しい評価制度を導入し、5年で離職率の大幅ダウン、株価3倍、「アドビを働きがいのある会社として勧められる」と回答した社員が10%増加、といった成果をあげています。
(記事はこちら:ランク付けをやめ、納得感のある人事制度を実現。アドビ「チェックイン」運用の実態)
Q:組織が拡大する中で、経営層がマネージャーに対して出来るサポートはどのようなものがありますか?
まずは自社の「マネジメントのあるべき水準」を明確にし、その水準に沿ってマネージャーが自走できる環境を整えることが有効だと思います。
例えばメンバー同士のコミュニケーションを促したり、コーチングを用いて内省する環境を整えたいのであれば「1on1」を導入し、制度として整えることが必要です。
その体制づくりをマネージャーや人事と連携して行うことが、経営層ができることではないでしょうか。
弊社作成の「1on1パーフェクトガイドブック」もぜひ参考にしてみてください。
Q:マネージャー向けの研修は行っていますか?
Wistantでは個社別にマネージャー向けの勉強会を開催しております。
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いかがでしたでしょうか。
この度、弊社主催のイベントにご参加いただいた皆さま、改めてありがとうございました。
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