組織変革の「時」に迫る、ドキュメンタリー形式のイベント「THE TRANSITION」。
7月14日(火)に開催した第4回では、GEヘルスケア・ジャパン社の桜庭 理奈様、ディー・エヌ・エー社の菅原 啓太様をゲストにお迎えして、「HRBP」をテーマにお話いただきました。
講演中には、多くの方からチャット欄にてご質問を頂戴しましたが、時間内に全てお答えすることができなかったため、こちらのブログにて回答させていただきます。
※質問文は、一部を読みやすく編集させていただいております。
【目次】
「HRビジネスパートナー(以下、HRBP)」とは、「企業経営や事業に価値貢献する、HR領域のビジネスパートナー」です。国内では「戦略人事」と言われることもあります。
HRBPは、元々米国で生まれた考え方ですが、近年ではサントリーや日立製作所、ヤフーといった日本の大手企業でも導入され始めています。
元来、人事は採用・人員配置・労務など「オペレーション」を中心とした業務を遂行することが主流でした。
しかし、少子高齢化の進行や雇用形態の多様化といった環境変化により、人事に求められる仕事が変わりつつあります。具体的には、「オペレーション」だけではなく、経営戦略と人事マネジメントを連動させ、事業に対してこれまで以上に価値を発揮することが求められているのです。
▼より詳しくHRBPについて知りたい方は、こちらの記事もご覧ください
【徹底解説】経営を推進する戦略人事「HRBP」とは? 最新の海外動向から国内事例まで
Q:HRBPと一般の人事の業務は、どのように分担するのが良いのでしょうか?
業務分担の際には、その業務が事業成長に紐づいているかどうかがポイントになります。
HRBPの役割は、経営戦略と人事戦略を結びつけることです。そのため、会社のフェーズを見極めながら経営視点をもって業務を遂行することが求められます。
つまり、採用活動で使用する媒体はどうするか、など直接的に経営戦略に関わらない部分はわざわざHRBPの役割として割り振る必要はないと思います。
一方、「経営戦略に必要な人材を定義する」といったことは、HRBPと人事の共通機能として捉えることがベストだと思います。
HRBPの業務範囲は事業との親和性が強く、事業特化にしたほうが価値の出せる仕事を担っています。例えば組織開発や人材開発、中途採用や評価もですね。
逆に給与計算や労務管理、新卒採用といった活動は全社で動いた方がメリットがあるので、HR本部が担当しています。
社内におけるHRBPの立ち位置をざっくり言うと、「パートナーの事業・組織に一番詳しい人事」かなと思います。
▼参考記事
HRBPは「事業に資する」人事。人事戦略から採用、評価まで、DeNAの戦略人事の動き方
Q:HRBPとキャリアコンサルタントの役割は似ているのでしょうか?
事業を伸ばしていく上で、メンバーのキャリア相談に乗ることが必要であれば、業務内容としては一部被ることもあると思います。
ただし、キャリアコンサルタントの役割は「個人にとって望ましいキャリアの選択を支援する事」であり、経営戦略や人事戦略を立案し、実行していくことを目的とするHRBPとは目指す方向性が異なります。
桜庭さんは、HRBPの役割は主に3つあるとしています。
より具体的なHRBPの役割は、大きく分けて3つあります。まずは、経営課題や事業戦略を理解した上で、それを解決するための組織戦略を立てることです。
売上を伸ばす、利益をつくる、といったオペレーションメカニズムを回し、事業を成長させていくのはすべて「人」です。そのためにどういう人やリーダーが必要で、どういう組織を作っていくべきなのか。これを設計するのが、HRBPのひとつめの仕事です。
設計をすると、組織的に変革を促していかなければいけないことが出てきます。その変革を促して旗振りをしていく、いわゆるチェンジ・エージェントであることが、ふたつめの役割です。
そして最後が、社員の声を経営に届けることです。常に「社員がチャンピオン」であるべきなので、経営と社員との間の橋渡しをしっかりしていくことが、非常に重要になります。
▼参考記事
「HRBP」って何する人? 経営と人事、そして社員をつなぎ、変革を導くその役割とは
Q:HRBPになるためにはどのような経験が必要ですか?
HRBPは組織開発や採用、経営といった様々な知識を必要とし、相手が誰であっても信頼関係を構築する能力や、自然と人を惹きつけるような人間性まで幅広いスキルが求められます。
さらに、「御用聞き」からコンサルタント、時にはビジネスパートナーなど、日々の業務の中で様々な視点を持つ事が必要となるため、「このような道を歩めばHRBPとして活躍できます」とは一概にいえないと思います。
そんな中、まずできることは、「現場」を把握し、経営者や人事、各事業部のマネージャーが困っていることを積極的に拾いにいくことです。
しかし、それだけでは戦略に紐づけるスキルを身につけられないので、経営や事業に関する情報を収集し、「社長並み」の視点を持つことも必要でしょう。
また、HRBPは必ずしも人事から経験する必要もないとされています。従業員1人ひとりの個性や、部署ごとの課題を把握した上で解決する能力が求められるので、事業活動において優秀な人材を抜擢する企業もあります。
▼過去にSELECKで、カゴメ株式会社 人事最高責任者の有沢さんに取材させていただいた時の記事もご覧ください。
HRBPの役割としては、基本的に現場に行って、面談などを通じて1人ひとりのキャリアに向き合う。本人にキャリアの希望を聞いたり、介護やお子さんの病気といった個人の事情まで含めてしっかり話します。
こうした立場なので、現場の人が「この人だったら信用できる」と思えるような、現場の経験者に入ってもらっています。例えば営業担当のHRBPは、支店長の経験者が務めています。
人事の重要なミッションのひとつに、自律的にキャリアを考えるカルチャーを醸成することがあると思います。制度や仕組みを作ることが、人事の目的ではないんですね。
では制度や仕組みを何のために作るのか、極端に言うと、従業員にハッピーに働いてもらうためです。そのためには何をしたらいいのかは、やはり現場に行かないとわかりません。
▼参考記事
人事こそ、イノベーティブであれ。HRBPや副業制度も導入した、カゴメの組織づくりとは
Q:HRBPを立ち上げる適切はタイミングはどのような場合ですか?
HRBP立ち上げのタイミングは企業によって様々ですが、一つは「事業が多角化してきたタイミング」が挙げられます。
ディー・エヌ・エー社でも、事業が多角化する中で、同社が大切にしてきた組織文化をフォローする必要が出てきたタイミングにHRBPを立ち上げたといいます。
組織が拡大してくると、社長ではなくて部長レイヤーでも「部としてやりたいことがあるのに、組織のスピードが上がらない…」といった課題が出てくるわけです。
そのボトルネックがどこにあるのかと言うと、人材不足だったり、組織課題だったりします。
そういった課題に対して、採用をするのか、誰かを抜擢するのか…そのような意思決定の際に、事業リーダーの壁打ち相手となって、事業スピードを上げることに貢献できるのがHRBPだと思っていますね。
▼参考記事
HRBPは「事業に資する」人事。人事戦略から採用、評価まで、DeNAの戦略人事の動き方
Q:在宅勤務が当たり前になっていくなかで、HRBPとしてできることはありますか?
今後、テレワークをはじめとした多様な働き方が許容されるようになると、メンバーそれぞれに対する「力の引き出し方」が変わってきます。
出社状況が様々な中で、組織の「理想的なあり方」を模索していくには、人事は面白いフェーズにいるといえるのではないでしょうか。
従業員の顔を直接見ることができる時は、顔色を見て声かけたり、一緒に散歩をするといったことができますが、テレワークでは相手の変化に気づく機会が圧倒的に少なくなっていると思います。
しかし、ビデオ通話を通じても相手の表情の「影」に気づくことは可能であり、早めに気づいて挙げられるよう、こちらから意図的にコミュニケーションをとる時間をつくることが大切です。
いかがでしたでしょうか。
この度、弊社主催のイベントにご参加いただいた皆さま、改めてありがとうございました。
「THE TRANSITION」のシーズン2が8月4日(火)よりスタートします。今回も「1on1」「OKR」「評価制度」「HRBP」の4つのテーマについて、豪華ゲストの方々をお招きし、実話に基づいて余すところなくお話いただく予定です。
いずれも【500名限定・無料オンライン配信】となりますので、ぜひご参加ください!
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