組織変革の「時」に迫る、ドキュメンタリー形式のイベント「THE TRANSITION」。
6月23日に開催した第1回では、ヤフー社の小金様、Sansan社の三橋様をゲストにお迎えして、「1on1」をテーマにお話いただきました。
講演中には、多くの方からチャット欄にてご質問を頂戴しましたが、時間内に全てお答えすることができなかったため、こちらのブログにて回答させていただきます!
※質問文は、一部を読みやすく編集させていただいております。
【目次】
Q: 月に1度、1on1をしているのですが、何を話していいかわからずメンティーにとって有意義な時間になっているかどうかがわかりません。
1on1で話す内容は、「メンティーが話したいこと」によって決まります。そのため、1on1の目的を固定せずに1on1を始める前に、その場の目的についてメンターとメンティで確認することが重要です。
1on1に決まった形式はありませんが、ヤフー社では参考として下図のような型を作成しているといいます。
(参考記事:「正しい1on1」は存在しない? 1on1のプロ4人が、読者のリアルな悩みに答える!)
また、1on1の時に必ず「良かったことの振り返り」と、「それに対する承認と賞賛」を行う習慣をつけると、少しずつ「1on1のスタンス」が定着していきます。
Wistantではメンティ側に「1on1の充実度」アンケートをとることができます。充実度とは、1on1がメンティの成長につながっているかを問うものです。
事前アンケートを実施して「1on1の目的をすり合わせる」ことも重要ですが、1on1後にもメンティの満足度を確認することで、より質の高い1on1を目指してメンター側も振り返りを行うことができます。
Q: 1on1はそもそも関係性が築けていないと難しいと聞きますが、関係性を築くために1on1をするのではないでしょうか?
「1on1を通じて関係性の構築を図ることが、組織改善のために重要である」といえる一方、そもそもの関係性を築けていないと、より効果的な1on1ができないということも事実です。
週1一回、30分の1on1を実施しているヤフー社では、1on1をするのに十分な関係性になっていない場合は「毎日5分の関係性から始めてください」というアドバイスをしているといいます。
僕は1on1って「関係性のリトマス試験紙」だと思うんです。
1on1をすることで、今メンバーとの関係性が良好かどうかが明らかになる。
なので、場が固くなっているならば、今はそういう関係性なんだと自覚して、普段のコミュニケーションから見直すことが大切かなと思います。
Q: 1on1は心理的安全性の担保に寄与しますか?もしするとしたら、それはなぜでしょうか?
1on1が心理的安全性の担保に寄与する場合もあれば、逆に無くなる場合もあり得ます。
よって、必ずしも1on1をしたから心理的安全性が高まるとは言い切れません。まずは日頃からコミュニケーションを積み重ねて、関係性を構築することが重要です。
Q: 部下が本音で語れなかったり、上司に無意識に忖度してしまうことがあるのではないでしょうか?
評価基準の中に「日頃の態度」のような項目があれば、部下は本音を話にくくなってしまうかもしれません。対して、評価が「成果」重視であれば、忖度する必要も無くなるのではないでしょうか。
まず、1on1が「評価には関係ない」ということを理解し、メンティにも明確に伝えることが重要です。
Q: 単なる不満や個人のものの捉え方に依ることが大きい時、皆さんはどのようなアプローチをされていますか? 不満を聞くだけでは時間の無駄だと思いがちで、反対派が存在している気がしています。
不満を吐き出すことで、メンティに良い効果があるならば良いと思います。1on1の後にメンティが「行動変容」を起こせるかどうかが重要です。
不満を吐き出す場では、メンターのストレスが溜まるのも当然だと思うので、メンターのフォローも必要になってくると思います。
Q: 1on1に慣れていないメンティーに対して、会社としてどのようなフォローをしたらいいのでしょうか?
「1on1に慣れていなくても大丈夫」と伝えてあげることが大切です。コーチング、ティーチング、フィードバックや傾聴など、様々なスキルが求められる1on1は誰でも最初からできるものではありません。経験を積み重ねながら、徐々に慣れていくことが求められます。
加えて、実践型のワークショップを開催し、フォローを行うことも手段の1つです。弊社でも社内ワークショップを開催してフォローを行っています。3人でペアを組み、メンター役、メンティー役とフィードバック役の3人に分かれて傾聴トレーニングを行っています。
弊社では企業別のワークショップも開催しております。ご興味のある方は是非お気軽にお声がけください!
Q: 1on1を実施するにあたり、事前に情報収集は行うべきでしょうか?また、その方法は?
1on1を有意義な時間にするためにも、事前にメンティから情報をもらうことをおすすめします。
事前に「アンケート」などを実施して、「この1on1が終わったときに、どういう状態になっていればよいか」をすり合わせておくとスムーズに実施できると思います。
Wistantでは、メンティが事前アンケートで「1on1で話したいトピック」や「良かったこと・悪かったこと」などを回答することができます。
Q: メンティが1on1の事前準備として行うべきことはありますか?
目標に対してよかったことや悪かったことを事前に「内省」しておくことをおすすめします。
1on1はメンティメンターのための時間ではありますが、前提として「メンティとメンターの協働作業」でもあります。
一緒に考えてもらうためにも、その材料となるものは予め準備しておくべきでしょう。
Q: 1on1の実施後に報告書は作成するべきでしょうか? タレントマネジメントという観点で、横断的に共有した方がいいのでしょうか?
1on1の導入目的をどのような目的で導入しているかによるので、企業によって異なると思います。
ただし、「話した内容はメンター・メンティ間二人で留める」というのが原則ではあります。よって、基本的に報告書を書く必要はありません。
仮に作成したとしても、横断的に共有しないことをおすすめします。
Q: 1on1を導入するにあたって、どのような空間をつくるべきでしょうか?
1on1のお作法として、「話した内容はメンター・メンティ2人の間で留める」というものがあります。
そのため、周りの人に話が届かないよう「遮断された空間」を用意するのが理想的であり、オフィスの中に「1on1ルーム」を設けている企業もあるようです。その一方、オープンな場所で1on1を実施している企業もあります。
メンターとメンティがどのような関係性なのか、そして会社がどのような方針で1on1を導入しているのか、またオフィスのデザインによっても理想とされる空間は異なるので、あくまでも「メンティが話しやすい空間」をつくるよう心がけることが最優先です。
Q: テレワーク環境では日々の観察がしづらくなりますが、1on1を実施する上で出来る工夫はありませんか?
オンラインでも把握出来る「表情」や「顔色」などで把握するのがおすすめです。
テレワークという慣れない環境下にいることで、ストレスやモヤモヤを抱えている方は多くいらっしゃると思います。
そうした状況では、逆にハイテンションになりすぎてしまう方もいるので、相手の変化に気付くよう、よく観察することが重要です。
Q: 1on1の取り組みを維持・継続するための工夫仕掛けはありますか?
1on1の運用には、どうしても工数がかかってしまったり、マンネリ化して継続しづらいという声も多いのが事実です。
よって、定期的にメンターで振り返り会を行い、よりレベルの高い1on1ができるようにディスカッションする機会を設けると良いでしょう。
Wistantでは、1on1を実施するメンターとメンティの組み合わせを簡単に作成でき、事前アンケートも実施できるのでマネージャーの工数削減に役立ちます。
Q: どの程度までの部下を1on1の対象を、どの範囲の部下までにとすべきなのか知りたいです。現状は管理職だけですが、次世代幹部まで広げようかと思っています。
次世代幹部まで広げるのはとてもいいですねと思います!対象範囲を広げると、工数の問題も出てくるはずなので、誰が誰を担当するか?を考慮すると良いでしょう。
担当を増やして忙しくなり「業務に手をつけられない!」という状況になっては元も子もないので、管理職の人が次世代幹部の人のメンターになってもらう、という体制作りもおすすめです。
1on1の頻度や時間の長さ、プレイングマネージャーか否かにもよりますが、対話の質を落とさないためにも抱えるメンティの数は最大でも10名程度が限界です。
もし人数が多すぎて困っているのであれば、同僚同士の1on1を許可することも方法の一つです。それでも強制的に大人数を任せたいのであれば、評価に加えるなどの工夫も必要かもしれません。
Q: 1on1におけるコーチング・ティーチングの使い分け方と、フィードバックの具体的な型を知りたいです
コーチングとティーチングは「SL(Situational Leadership)理論」という理論に基づいて、「相手の発達度合い」に応じて使い分けるのを意識するといいと思います。
※SL理論…「リーダーシップ条件適応理論」のこと。リーダーは資質ではなく、部下の成熟度に合わせて役割を変える必要があるとされている。
例えば、新卒に対してはオープンクエスチョンで相手の内省を促しつつティーチングの割合を多めにし、入社歴の長いメンバーに対してはコーチングを中心に行うようにするのがおすすめです。
フィードバックは、いくつかのフレームワークが存在します。今回はそのうち2つをご紹介。
▼こちらの記事ではフィードバックの実例も公開しております。是非ご覧ください。【実例アリ】新入社員を凡庸にするアドバイス vs 尖ったエースに変えるフィードバック
ただし、1on1ではフィードバックの型にこだわるというよりも、善悪の判断を入れずに、メンターとして感じたことを事実ベースで伝えることが重要です。
フィードバックにおいて僕が心がけているのは、事実を伝えることです。
「正しい・間違っている」でも「良い・悪い」でもなく、「僕がこう感じた」という事実を伝える。それを受け取るかどうかはどちらでもいい、という前提で話をすることが大切です。
「これは本来こうだけど、あなたは違うね」といった風に、自分の評価や判断、主観で決めつけないことが、とても大事だと思いますね。
▼フィードバックについてより詳しく知りたい方は、是非こちらの記事もご覧ください。フィードバックの意味とは? ビジネスでの使い方・フレームワーク・企業事例を徹底解説
Q: 1on1、コーチングで最も重要なことはなんですか?
メンターの「傾聴」する姿勢が最も重要です。
自分の面目を保とうと「次に何を言おうか」「どう言ったらいいのか」を考えていてはメンティの話に寄り添うことができません。
メンティの考えや思いをなぞりながら、同意したり、促したりなど、リアクション込みで耳を傾けるようにしましょう。
Q: 1on1とコーチングの違いはなんでしょうか?
1on1は「機会」であって、ティーチングやコーチング、フィードバックなどは相手の話に寄り添うための「手段(テクニック)」です。
Q: コーチングのスキルを上げる方法や、1on1のおすすめの書籍はありますか?
コーチングのスキルをあげるにはスクールに通ったり、ワークショップに参加する方法があります。社内であれば、第三者に1on1のフィードバックをもらう機会をセッティングするのもいいでしょう。
1on1は書籍でも学ぶことはできますが、あくまでも実践ベースで改善していくことをおすすめします。
▼おすすめの書籍3選
・ヤフーの1on1―部下を成長させるコミュニケーションの技法
・シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング
いかがでしたでしょうか。
この度、弊社主催のイベントにご参加いただいた皆さま、改めてありがとうございました。
弊社では、マネジメントに関する無料の個別相談会も実施しております。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお申し込みくださいませ。
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