ビジネスシーンにおける「正しいフィードバック」を理解・実践できていますか?この記事では、ビジネスでのフィードバックの意味から、効果的な使い方、実際に活用するためのフレームワークなど、フィードバックのすべてを解説します。
目次
フィードバックのもともとの意味
ビジネスにおけるフィードバックの意味
フィードバックの効果
効果的なフィードバックの方法
フィードバックの代表的な3つのフレームワーク
「フィードフォワード」とは?
フィードバック文化を組織に根付かせる10のコツ
フィードバック文化の成功事例
正しいフィードバックはパフォーマンスを向上させる
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フィードバックは、英語でFeedbackと表します。「Feed=餌を与える」と「Back=戻す」という異なる2つの英単語が繋がることでできた単語です。直訳すると「餌を与えて戻す」という意味ですが、元々は機械に電気信号を与えることで発する「音」を指すための単語でした。現代では、「物事がうまく進んでいるか否か」を広く表す言葉として主に使用されています。
(※参考記事:Word of the Day feedback)
ビジネスシーンにおいて、フィードバックは以下の2種類に分けることができます。
① 商品やサービスに対するフィードバック
② 人の行動や振る舞い、姿勢に対するフィードバック
消費者から寄せられる、その商品やサービスに対する意見のことを、カスタマーフィードバックと呼びます。カスタマーフィードバックでは、以下の効果を得ることができます。
・商品やサービスの改善に繋がるヒントを得る
・消費者の満足度を測ることができる
・商品やサービスに対するリピート率をあげる
(※参考記事:How to improve CX with Customer Feedback Management)
一般的に、仕事をしている中で使用される「フィードバック」という言葉は、業務に対する姿勢や行動を指すことが多いです。
フィードバックでは、受け手にとって有益な情報を送ることにより、その人のパフォーマンスを上げることを目指します。言い換えるならば、「成長をサポートしたい相手に対し、その人のパフォーマンスの良し悪しを伝え、成長に繋げること」をフィードバックと言うことができるでしょう。
(※参考記事:Get Looped In on 'Feedback' Its history is more than just noise.)
また、フィードバックは上司から部下へ伝えることだけに留まらず、同僚同士で伝え合うこともあれば、部下から上司に送ることもあります。
(※参考記事:「ネガティブフィードバック」とは絶対に言わない「ネガティブフィードバック」のやり方とは?)
今回の記事では、フィードバック=②仕事での行動や振る舞い、姿勢に対するフィードバックとしてご説明していきます。
フィードバックは、従業員同士のコミュニケーションやチームワーク、生産性やエンゲージメントに大きな影響を与えます。
以下は、フィードバックによって得られる主な効果です。
フィードバックをすることで、受け手は自身の改善すべき箇所を明確にすることができます。本当にフォーカスするべき箇所に労力を注ぐことができるため、短い時間で効率的に業務を進めることができます。リサーチ会社のGartnerが2018年に発表したデータによると、フィードバックは生産性を13%向上させることがわかっています。
(※参考記事:Motivate Employees With Ongoing, Forward-Looking Feedback)
また、フィードバックにより自身の強みを自覚している従業員は、そうでない従業員に比べて約110%の利益を企業にもたらしていることも明らかになっています。
(※参考記事:5 Employee Feedback Stats That You Need to See)
フィードバックをすることにより、自身の行動や言動が他者に及ぼしている影響を明らかにすることができます。自身の影響力を自覚することで、従業員同士や上司との関係性をより良くするための一歩を踏み出すことができるでしょう。
(「上司と部下の関係性の築き方」はこちら)
HEC Business of Schoolが2010年に発表したデータによると、6割近くの人が初対面の人を信頼することできるのに対し、4割程度の人しか上司を信頼していないことが明らかになっています。
(※参考記事:Threatened Leadership: The Loss of Subordinate Trust )
上記のような状況を改善するためにも、フィードバックによってお互いのことを深く知ることは重要だと言えます。
フィードバックでは「上司や会社から何を求められているのか」がわかるため、従業員のモチベーションを刺激し、エンゲージメントを向上させることができます。(「エンゲージメントの向上」に関する記事はこちら)実際、Gallupが2015年に発表したデータによると、上司から定期的にフィードバックを受ける従業員の方が、そうでない人の3倍以上エンゲージメントが高いことが明らかになっています。
(※参考記事:Employees Want a Lot More From Their Managers)
定期的なフィードバックは、離職率にも影響を及ぼすことがわかっています。フィードバックにより、エンゲージメントの向上や従業員の関係性が向上するため、最終的に離職率にも影響が出ます。2011年にGallupが65,672人を対象に行った調査によると、フィードバックを定期的に受ける従業員は、そうでない従業員に比べて、離職率が14.9%も低いことがわかっています。
(※参考記事:The Secret of Higher Performance)
フィードバックはただ単に送るだけでは、期待する効果を得ることはできません。以下のコツを押さえる事で、より良いフィードバックを送ることができます。
フィードバックを送る際には、送り手と受け手との間に心理的に安全な関係性が築けている必要があります。
具体的には、「あなたを批判するためではなく、成長してもらうためにフィードバックを送っている」というメッセージが相手に伝わる必要があります。フィードバックを送る際には、受け手を尊重し、礼儀正しく伝えましょう。また、他の同僚の前で恥をかかせるようなフィードバックの送り方は決してしてはいけません。必ず、1対1の状況を確保した上でフィードバックを送りましょう。
(※参考記事:10 Tips for Building a Feedback Culture)
フィードバックでは、良い点・改善点をともに具体的に伝える必要があります。そうすることで、どのような行動をとれば良いのかを明確にすることができ、フィードバックを結果にしっかりと結びつけることができます。
(※参考記事:9 Ways to Give Effective Employee Feedback)
具体的には、以下のように具体的に伝える必要があります。
<NG:抽象的なフィードバック>
「もっと効率的に仕事を終わらせてください」
<GOOD:具体的なフィードバック>
「リサーチ業務に時間がかかっているので、現状の半分くらいの時間で終わらせましょう。その分の時間を情報をまとめる作業に充てて、追加のリサーチがもし必要なら、その都度行った方が効率が良いと思います。」
フィードバックは、直ちに伝える必要があります。何かアクションを起こした直後にフィードバックを送ることで、しっかりと受け手に伝わり、行動に変化が現れます。何ヶ月間も前の事象に対してフィードバックを送ったとしても、アクションを起こした際に生じた「感情」や「周囲への影響」が忘れ去られてしまっているため、意味を成しません。また、何週間・何ヶ月前のアクションに対するフィードバックは、過去のことを掘り返しているような印象を与え、相手に不快な思いをさせる可能性も高いです。
(※参考記事:5 Steps for Giving Productive Feedback)
フィードバックを送る際には、フレームワークを使用することでより効果的にフィードバックを送ることができます。
・FEEDモデル
・SBIモデル
・McKinsey’s model
FEEDモデルは最も基本的なフレームワークです。以下の頭文字をとって、FEEDモデルと呼ばれています。
F:Fact
E:Example
E:Effect
D:Different
<F:Fact>
フィードバックを送る際には、「事実」(=Fact)に基づいていなくてはいけません。それ故、フィードバックを伝える際には、事実の確認から始めます。具体的には、
・「その人が何をしたのか」
・「その人の振る舞いはどのようなものだったのか」
・「その人はなんと発言したのか」
などをまず最初に確認します。大事なことは、感情を切り口としてフィードバックを伝えるのではなく、最初に相互で事実確認を行う事です。以下のような形でフィードバックを伝えると良いでしょう。
-「〇〇にて、XXをしてくれたよね。」
-「XXの会議中に、△△っていう発言をしてくれたよね。」
上記のようなフレーズからフィードバックを始める事で、送り手と受け手との間での認識を合わせることができます。
<E:Example>
事実確認をした後には、なぜその事実を「例」(=Example)として選んだのかを伝えます。言い換えるならば、「なぜその事実について語るのか」を伝えるという事です。具体的には以下のような例が考えられます。
Fact
-「〇〇にて、XXをしてくれたよね。」
Example
-「〇〇にて、XXをしてくれたけど、やり方を改善できると思うから、声をかけたんだ。」
Fact
-「XXの会議中に、△△という発言をしてくれたよね。」
Example
-「普段はあまり発言をしないのに、XXの会議中に、△△という発言をしてくれたから驚いたんだ。」
上記のように、その事実をトピックとして選んだ理由を伝える事で、送り手の意図をしっかりと伝えることができます。
<E:Effect>
その人の行動・振る舞い・発言がどのような「影響」(=Effect)を及ぼしたのかを伝えます。以下のような例を考えることができます。
Fact
-「〇〇にて、XXをしてくれたよね。」
Example
-「〇〇にて、XXをしてくれたけど、やり方を改善できると思うから、声をかけたんだ。」
Effect
-「〇〇にて、XXをしてくれた事は嬉しかったけれど、締め切りまでギリギリになってしまったよね。やり方を改善できると思うから、声をかけたんだ。」
Fact
-「XXの会議中に、△△という発言をしてくれたよね。」
Example
-「普段はあまり発言をしないのに、XXの会議中に、△△という発言を発言してくれたから驚いたんだ。」
Effect
-「普段はあまり発言をしないのに、XXの会議中に、△△という発言を発言してくれたから驚いたんだ。あの発言のおかげで、会議の目的を再認識することができたよ。」
その人がとった行動や発言による「影響」を伝えることで、その人の強みや、改善点を具体的に伝えることができます。
<D:Different>
FEEDモデルの最後には、「代替案」(=Different)を提案します。具体的には、「他にどのような行動をとることができるか」を提案します。以下のような例で、FEEDモデルのフィードバックを締めくくることができます。
Fact
-「〇〇にて、XXをしてくれたよね。」
Example
-「〇〇にて、XXをしてくれたけど、やり方を改善できると思うから、声をかけたんだ。」
Effect
-「〇〇にて、XXをしてくれた事は嬉しかったけれど、締め切りまでギリギリになってしまったよね。やり方を改善できると思うから、声をかけたんだ。」
Different
- 「〇〇にて、XXをしてくれた事は嬉しかったけれど、締め切りギリギリになってしまったよね。次取り組むときは、XXが半分完成した時点で、一度僕に確認してもらってもいいかな?」
Fact
-「XXの会議中に、△△という発言をしてくれたよね。」
Example
-「普段はあまり発言をしないのに、XXの会議中に、△△という発言を発言してくれたから驚いたんだ。」
Effect
-「普段はあまり発言をしないのに、XXの会議中に、△△という発言を発言してくれたから驚いたんだ。あの発言のおかげで、会議の目的を再認識することができたよ。」
Different
-「普段はあまり発言をしないのに、XXの会議中に、△△という発言を発言してくれたから驚いたんだ。あの発言のおかげで、会議の目的を再認識することができたよ。次会議がある際には、自分の意見ももっと言えるといいね。」
SBIモデルは、「リーダーシップ」により焦点を当てたフレームワークであり、フィードバックをシンプルに行える点が特徴です。以下の頭文字をとってSBIモデルと呼ばれています。
S:Situation
B:Behaviour
I:Impact
FEEDモデル同様、上から順にフィードバックを伝えます。
<Situation>
まず最初に、リーダーシップを発揮した「状況」(=SItuation)を描写します。具体的には以下の要素を含めると良いでしょう。
・時間
・場所
・何が起きたのか
重要な点は、FEEDモデルと同様に、意見などを含めず客観的に「状況」を描写することです。
<Behaviour>
状況を描写した後には、「行為」(=Behaviour)を説明します。具体的には、以下のような切り口からフィードバックを行います。
・どのような行動をとったのか
・どのような発言をしたのか
・どのような振る舞い方をしたのか
この段階においても重要な点は、客観的に「その人の行為」を描写することです。
<Impact>
SBIモデルの最後には、どのような「影響」(=Impact)を与えたのかを、自身の意見と共に伝えます。基本的には、「他者にどのような影響を与えたのか」という視点でフィードバックを送ります。そうすることで、受け手のリーダーシップに関する気づきを与えることができます。Situation / Behaviour / Impactを一連の例で表すと、以下のようになります。
Situation
-「◯◯の営業先の準備をチームで行っている時に」
Behaviour
-「営業先の資料を率先して収集してまとめてくれたよね」
Impact
-「そうすることで、準備自体も円滑に進んだし、他のメンバーに刺激を与えていたよ。実際、いつも動いてくれない△△さんが自ら行動してくれた。」
(※参考記事:Using the SBI Model for More Effective Feedback)
McKinsey’s modelは、マッキンゼー・アンド・カンパニーが使用しているフィードバックのフレームワークになります。改善点を指摘する際に適したフレームワークです。
McKinsey’s modelは、3つのステップに別れています。
Part A:改善して欲しい具体的な行動や振る舞いを指摘する
Part B:その行動や振る舞いによって、自身がどう感じたのかを伝える
Part C:どのような改善策があるのか提案する
以下のような形で使用することができます。
Part A : いつもプレゼンの資料を作成してくれているよね。
Part B : 作成してくれるのは有難いけれど、提出が突然過ぎて確認するのが大変なんだ。
Part C : 次回からは、半分作成が終わった時点で、僕に一度提出してくれるかな?
McKinsey’s modelは非常にシンプルで使用し易い反面、改善を促すことが前提となっているモデルであるため、使用には注意が必要です。受け手を必要以上に非難しないためにも、慎重に言葉を選ぶ必要があります。重要な点は、McKinsey’s modelによるフィードバックはあくまで「受け手のパフォーマンスを上げること」を目的とている点です。相手を否定することが目的ではないことを心に留めておきましょう。
(※参考記事:Working With McKinsey)
「フィードバック」と似た概念として、「フィードフォワード」があります。両者の違いと、その使い方について説明します。
フィードバックとフィードフォワードは共に、受け手のパフォーマンスの向上を目指す手法です。フィードバックは、過去の行動や言動にフォーカスします。その一方で、フィードフォワードは未来志向である点が特徴です。
フィードフォワードでは、「現在とは異なる方法で、どのようにパフォーマンスを上げることができるか」がテーマになっています。言い換えるならば、「未来に向けてのパフォーマンスの向上」が目的と言えるでしょう。
(※参考記事:What’s The Difference Between Feedback And Feedforward?)
フィードフォワードが注目される理由として、フィードバックは正しく使用することが比較的難しい点が挙げられます。フィードバックは、過去に起きた出来事を起点として受け手の成長を促します。しかしながら、送り手のスキル不足により、ただ単に相手を否定してしまうことも多いです。(※参考記事:Why does feedback fail?)
単なる批判になってしまう、推奨されないフィードバックは以下のような例が考えられます。
「なんで、あんな資料を作成したんだ?その資料のせいで、営業を断られた。」
「あなたの発言のせいで、会議の進行が止まってしまった。」
コロンビア大学の神経科学者であるKevin Ochsnerによると、相手に不快な思いをさせるフィードバックは、結果的にフィードバックの受け手の生産性を逆に下げてしまうことがわかっています。対照的に、フィードフォワードは、これからの事柄が、うまく行くように事前にアドバイスをすることです。これから起こるであろう事柄について、前向きな改善策を提案するため、単なる批判だけになってしまう可能性が低いと言えるでしょう。それ故、フィードフォワードの方が、受け手に受け入られやすいといったメリットがあります。
(※参考記事:5 Steps for Giving Productive Feedback)
フィードフォワードは、主に3つのステップを踏むことで、効果的に送ることができます。
<変えて欲しい行動・言動を伝える>
まず最初に、改善して欲しい行動や言動を受け手に伝えることから始めます。その際、「批判」を含める必要はありません。端的に「事実」を伝えましょう。具体的には、以下のようなフレーズで伝えると良いでしょう。
「いつも資料を作成してくれるときに、〇〇の作業から初めてくれているよね。」
「営業先に回るとき、△△の話を持ち出しているよね。」
<改善策を伝える>
2つ目のステップでは、改善策を提案します。具体的には以下のような事例を考えることができます。
「次回からは、〇〇の作業は一番最後に進めてみてはどうかな?」
「次回からは、△△の話ではなく、XXの話をしてみるのはどうかな?」
「次回からは〜」というフレーズを用いることで、今後の改善策を提案することができます。
<改善策のメリットを伝える>
最後に、提案した改善策のメリットを伝えてフィードフォワードを締めくくります。以下のような形で、メリットを伝えると良いでしょう。
「◯◯の作業を最後にすることで、もっと効率良く資料を作成できると思うんだ。」
「XXの話をすることで、もっとお客さんの共感を得ることができると思うんだよね。」
重要な点は、「あなたの行動がダメな理由」を不必要に伝えないことです。例えば、以下のようなフィードフォワードはあまり推奨されていません。
「〇〇の作業は非効率なので、△△をしてください。」
上記では「〇〇の作業は非効率」と、否定をしていることがわかります。このような伝え方ではなく、下記のようにメリットを中心とした伝え方が推奨されます。
「△△の方が効率的なので、これからは△△を中心に進めて行こう」
フィードバックとフィードバックは共に、「パフォーマンスの向上」を目指す手法になります。両者には明確な境界線はなく、状況や受け手によって、柔軟に利用すると良いでしょう。
フィードバック文化が組織に根付いている企業では、上司と部下という階層を超えて、自発的にフィードバックが送られます。
それぞれの従業員がパフォーマンスの向上を目指すことができるため、組織全体のパフォーマンスの向上を期待することができます。(※参考記事:Three Steps For Creating A Feedback Culture)
フィードバック文化を根付かせるための10個のコツをご紹介します。
企業の中核を担っている経営者や人事が、従業員に対して積極的にフィードバックを行います。また同時に、彼らが従業員からフィードバックを求めることで、階層を超えてフィードバックをすることが良しとされる文化を作るきっかけともなります。
同僚同士のフィードバックは非常に重要です。同僚同士で、よかった点・改善点をフィードバックし合うことで、お互いのことを良く知ることができます。また同時に、自身が価値ある人間としてその企業で働いていることを改めて認識する良いきっかけともなります。
フィードバックは受け手の成長を促し、パフォーマンスを向上させることを目的としています。それ故、従業員の成長意識が根本的に必要不可欠であることは言うまでもありません。従業員の成長意識を促すためには、人事評価制度の見直しや、従業員の希望する部署への移動など、様々な人事施策が必要となるため長期的に取り組むことが推奨されます。
フィードバックには、正しい伝え方があります。誤った伝え方では、最終的に従業員のパフォーマンスを下げてしまう可能性もあります。正しくフィードバックを伝え、フィードバックが価値あるものだと従業員に認識してもうらためにも、フィードバックのトレーニングは必須と言えるでしょう。
1年に一回、もしくは半年に一回の人事評価の際に行われるフィードバックだけでは、従業員の成長は期待することができません。なぜならば、1年や半年という長い期間の間に、過去に起きた出来事は忘れ去られてしまうからです。(「目標管理の方法」についてはこちら)月に1回・2回、もしくはプロジェクトごとのより頻度の高いフィードバックを送り合うことで、瞬時にフィードバックをすることが可能になります。
フィードバックを伝え合う上で重要な点のひとつとして、送り手と受け手の信頼関係が挙げられます。それ故、フィードバックをする際には、降格や罰則を受けるといった恐怖心は取り除く必要があります。経営者や人事が従業員に対し、フィードバックと降格や罰則は無関係であることを丁寧に説明する必要があると言えるでしょう。
フィードバックを送る際には、正直に伝える必要があります。しかしながら、改善点だけを指摘するようなフィードバックでは、受け手は傷ついてしまいます。フィードバックを送る際には、必ず「良かった点」も伝えましょう。具体的には、最初に良かった点を伝え、その後に改善点を指摘することで、フィードバックによって受け手が傷つくことを防ぐことができます。
フィードバック文化を企業に根付かせる上での最大の困難が、フィードバックを習慣化することです。そこで、意図的にフィードバックをするタイミングを設けることで、徐々に習慣化へ近づけることができます。例として、チームミーティング終了後、フィードバックのために10分間の時間を確保するなどの小さな施策から始めると良いでしょう。
フィードバックが企業で自発的に行われるためには、フィードバックの重要性を根本的に理解している必要があります。特に、経営層やマネージャー層に重要性が理解されていることが重要になります。彼らがフィードバック意義を理解せず、フィードバックではなく他の業務に時間を充てるようでは、いつまでたっても企業にフィードバックを伝え合う文化は作られません。
全ての人が、対面でのフィードバックが好きな訳ではありません。人によっては、文章で伝えた方が上手に伝えることができる人もいます。オンラインや小規模のフィードバックトレーニングなどを提供し、柔軟に対応することで、従業員のフィードバックに対する抵抗感を減らすことができるでしょう。
フィードバック文化を根付かせることに成功している会社の事例を3つ、ご紹介致します。
Workdayはアメリカに本社を置く、企業向けのクラウド型の財務・人事、プランニングアプリケーションを販売する会社です。
(※参考記事:会社概要)
Workdayでは、フィードバックを真摯に受け止める文化が根付いており、それによりマネジメントが改善されていると従業員の89%が回答しています。(※参考記事:How Workday Focuses on Improving Its Workplace Culture Every Day)
まず最初に、Workdayでは従業員のことを徹底的に理解することから始めます。そうすることで、従業員同士の信頼関係を築き、フィードバックに対する抵抗感を減らしています。
具体的には、
・幸せに感じる瞬間はどのような瞬間ですか?
・毎日出社しようと思うモチベーションは何ですか?
このような、少しユニークな質問を入社時に投げかけることから始め、相手のことを深く知るきっかけを与えています。また、このようなセッションを入社時に行うことで、新しい社員を受け入れていることを伝えることができます。このような取り組みは、仕事に対して前向きに取り組むことを可能にし、自然と成長意欲を促すことができます。そうすることで、従業員1人ひとりが自発的にフィードバックを伝え合うようになります。
SAP Americaはコンピューターソフトウェアの開発・販売を行う会社です。
(※参考記事:会社概要、沿革、所在地)
SAP AmericaではSAP Talkと呼ばれる、1対1でフィードバックを伝え合う機会を意図的に設けています。SAP Talkの特徴は、人事評価とは全く関係がない点です。SAP Talkにて、改善点を指摘されたとしても、それは決して降格には影響しません。SAP Talkはあくまで、従業員同士で業務に対してのフィードバックを送り合い、パフォーマンスの向上を目指すものだからです。実際、従業員の89%がSAP Talkによって、会社・上司から求められていることが明確になり、パフォーマンスが上がったと回答しています。
(※参考記事:SAP Talk - Our new performance philosophy without ratings. Story of how it all began..)
(※参考記事:How To Create A Culture Of Connection Within Your Organization)
Redditは、ニュースや個人の意見を投稿することができるソーシャルメディアで、アメリカでは6番目の人気を誇ります。
(※参考記事:What is Reddit? A beginner’s guide to the front page of the internet)
Redditでは、従業員が従うべきガイドラインを設定することで、フィードバックが良しとされる文化を築きました。ガイドラインを設定することにより、その会社で求められる「正しい行動」「正しい従業員への接し方」を統一することができます。
(※参考記事:Culture Talk with Reddit’s People & Culture Team)
ガイドラインの中に、適切にフィードバックを行うための要素を盛り込むこともひとつの手です。具体的には、以下のような項目が良いでしょう。
・相手の話をよく聞く
・言葉を丁寧に選ぶ
・相手を信頼する
上記のような要素を盛り込んだガイドラインを作成することで、フィードバック文化が浸透して行くでしょう。
今回の記事では、ビジネスにおけるフィードバックの意味から、企業事例まで幅広くご紹介しました。フィードバックは従業員のパフォーマンスを向上させる強力な手段です。適切に活用し、企業のパフォーマンスの向上に最終的に繋げられると良いですね!
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