「1on1が苦手」なマネージャーが変化する!社外メンターとして活躍するプロのメンタリング手法を徹底解説
ピープルマネジメント 1on1 研修 社外メンター
2024. 05. 01

「1on1が苦手」なマネージャーが変化する!社外メンターとして活躍するプロのメンタリング手法を徹底解説

 

▼ 執筆者紹介

安達 由紀代
プロコーチ/Wistant 社外メンター

・国際コーチ連盟認定プログラム
 CTI CERTIFIED PROFESSIONAL CO-ACTIVE COACH(CPCC)
・国際コーチ連盟認定プログラム CTI上級コース修了
・国際コーチ連盟認定プログラム CTI応用コース修了

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新卒で日本銀行に入行して30 年以上勤務。CTIジャパンでコーチングを学び、日銀に勤務しながらコーチングを兼業。セッションの都度、人の心が豊かに変わっていくことに心が震えるほどの喜びを感じる体験をして、2021 年3 月末に日銀を任意退職し、コーチとして独立しました。業界や年代を問わずコーチング、各種セミナーを提供している。

◼︎ 1on1が苦手・効果がない…と悩む「従来型思考のマネージャー」が抱える課題と自己解決の限界

 

  • 「これまでの思考・やり方」を変えることが困難

多くのマネージャーは、外部の影響(親、友人、教師、上司、環境など)を受けて、固定観念や信条に基づいて「マネージャーとして、こうあるべき」という自己像を形成しながら、資本主義社会の「競争、比較、成果」を重視する組織の方針に尽力してきました。

しかし、急激な変化と不確実性が特徴の現代では、多様な顧客ニーズ、価値観や働き方の変化、人材不足といった経営上の課題に対応するためには、次に挙げる能力が育つための職場環境とチームメンバーが自律的に活動できるマネジメントの必要性が急速に高まっています。

 

▼現代に求められる能力

・適応力:新しい環境や多様な変化に対して柔軟に対応できる能力

・革新力:新しいアイデアや方法を生み出し、既存の問題に対して創造的(新しい視点)な解決策を見つける能力

・共感力:相手の置かれている状況や気持を推察し、相手に寄り添う事の出来る能力

 

チームメンバーが自律的に活動するためには、マネージャーのサポートとコミュニケーションスキルが組織にとって不可欠ですが、部下との関わりに課題を抱えるマネージャーは少なくありません。その要因の一つに「既存の自己像(これまでの自分)」を変えられない難しさがあります。

 

名称未設定のデザイン (24)

 

例えば、部下の意見を聞く際に、「マネージャーとして正しく指導すべき」という固定観念や「部下は指示がないと動けない」などの先入観が先行し、無意識に指導的な態度になってしまったり、部下が沈黙を続けると、何とか解決しようとして主観的なアドバイスをしてしまうこともあります。これにより、部下が自主性を発揮し、自ら気づきや行動を起こす機会が失われ、ワークエンゲージメントが低下し最悪の場合は離職へと発展するケースもあります。

これらの問題を克服するためには、過去の自己像を否定するのではなく、自分を苦しめる固定観念や先入観を手放し、部下との関係構築に必要な要素(真の傾聴、効果的な質問法、自主性を促すアドバイスの伝え方など)を取り入れ意識的に新しい自己像を構築することが重要です。

 

  • コミュニケーションスキルを身につける難しさ

マネージャーが部下の主体性・自律を引き出すコミュニケーションスキルを身に付けて実践することは簡単ではありません。そこには、組織内における以下の3つの理由が存在しています。

 

①「傾聴の見本となる上司・先輩がいない」などのロールモデルの不在

② 自分の話しに100%耳を傾けて聴いてもらった経験がない

③ 自分の「傾聴スキル」が適切であるかFBが受けられない

 

【ブログ】1on1mentor

 

例えば、コミュニケーションにおいて重要な「聴く」ということは、部下が話している内容を「聞く」だけでは十分とは言えません。部下が自分の思いを自由に話せる環境を作り、部下の話に100%集中し、好奇心を持ち、本質的な思いに耳を傾けて聴くことによって信頼関係が育ち始めます。

 

部下の本質的な思いを引き出すためには、「部下の言葉の背後にある意味や感情を理解し、部下の表情や雰囲気にも注意を払い、非言語的なサインを読み取る」ことが必要です。また、対話の中で一歩引いて、客観的に部下の意見を受け止めるためには、固定観念や思い込みに基づいて部下の言葉に反射的に反応することを避けなければなりません。これらを実現するためには、知識・スキル・経験、そして上司としての役割から離れた心の余裕が必要です。

 

これらの課題を克服できないために社内の1on1ミーティング(以下「1on1」と表記)では思うような効果が期待できず、若手の離職に繋がるなど、結果的にマネージャーにとって更なる負担を招いてしまいます。マネージャーが1on1への苦手意識を克服しながら、自身を変化させるプロセスは「意識変革」にとどまらず、「マネジメント負担の軽減」の観点においても非常に重要です。

 

◼︎「従来型思考」を克服し、マネージャーの苦手意識を変える!プロのメンタリング手法

  • 1on1の「基本的知識」と「実践的知識」をセットで学ぶ

 

1on1は、主に「部下の主体性・自律の向上」を目的とし、部下と上司、チームの良好な関係性を生み出すことが目標です。この目標を達成するためには、研修等による知識の習得も大切ですが、「プロの社外メンター(以下「メンター」と表記)とのセッション」(以下「メンタリング」と表記)によりマネージャーが部下の視点でコミュニケーションスキルを体験し、1on1の場で実践することがゴールへの近道になります

【ブログ】1on1mentor (1)

マネージャーが「こうあるべき」という「従来型思考」を克服し、1on1で効果的なコミュニケーションスキルを発揮するための4つの習得プロセスをご紹介します。

 

① 研修による基礎知識の習得

全体研修により実践的な知識を習得し、マネージャー同士による具体的なロールプレイを実施することで現状を把握し、課題が明確になります。

② 部下の視点でメンタリングを体験する

メンタリングでは、メンターのコミュニケーションスキルを体験することにより、部下の視点に気づけるので本質的なコミュニケーションや1on1の必要性・重要性を真に理解することができます。自ら体験したことを1on1で実践することで、これまでの1on1との違いが分かるだけでなく、メンターとの対話を通してマネージャーとしての自身の課題(習慣や反射的な反応など)も明確になります。

③ 課題を克服するための行動を決める

メンターと共に1on1を振り返り、明確になった課題を克服するためのスキルを学び、具体的な行動をメンターと協働して決定します。再び1on1において学んだスキルを実践します。このプロセスを繰り返すことで「できること」に自信が持てるようになり、「できなかったこと」にも積極的にチャレンジできるようになります。

④ メンターから「提案型アドバイス」を受けてさらなる改善を目指す

メンターは、豊富なメンタリング経験と自らのキャリアから得た知見を活かして、マネージャーが抱える課題やマネジメントキャリア上の挑戦に対して実践的なアドバイスを提案します。
例えば、メンターはマネージャーが自分を客観的に見つめ直す「鏡」になり、日常の行動や気づきにくい癖などをフィードバックするとともに、改善するためのアドバイスを提案します。マネージャーはフィードバックや提案をもとに、自己の行動を見直し、変化を感じ取りながら成長していくことができます。

 

 

  • 学びと実践のプロセスを繰り返しながら「本当になりたい自分に気づく」

マネージャーは、前述1.①〜④を繰り返すことで、従来の研修だけの学びとは異なる実践的アプローチを経験し、部下の自主性や自律を促すためのより効果的な1on1へと変化させることができます。

①は数回実施してマネージャー間で共有し相乗効果を図りながら基本的なコミュニケーションスキルアップを目指します。②〜④は数ヶ月間継続することでより実践的なコミュニケーションスキルを高めます。

 

【ブログ】1on1mentor (3)

また、メンタリングは、マネージャーが業務の時間を一旦離れ自己の内面と丁寧に向き合うことで「本当になりたい自分」に気づく、意識を変革するための時間としても効果的です。 マネージャーは、メンターとの深い対話を通じて「従来型思考」にとらわれた固定観念や他者との比較による自己否定など、個々の経験に根差した課題に気づくことができます。

 

以下に自己の内面と向きあい、自己認識を促進するための3つの問いがあります。全てのことを止めて自分自身に静かに問いかけてみてください。

・マネージャーご自身の「充実した人生」とは何ですか?
・仕事に充実感を得ていますか?得られていない場合、それはなぜでしょうか?
・本当になりたい自分になるために、ご自分を変える覚悟はありますか

これらの問いに答えることで、マネージャーは自身の本質的な思いと向き合い、行動を起こす力を得ることができます。これは「本当になりたい自分」に気づいていただくための一例ですが、メンターがこれまでのメンタリングから積み上げた経験と、マネージャーを真に信頼するかかわりによって初めて実現します。

人材育成・エンゲージメント向上を実現 (4)

 

◼︎ 1on1の効果を高める、メンターの存在

  •  
  • 評価や否定がない「なんでも話せる関係性」だから自分の課題に素直に向き合える

  • メンターとマネージャーは、信頼を築き、自分の本質に素直に向き合える「特別な協働関係」です。上司や同僚、家族、友人との関係とは異なり、メンターとの関係は利害が生じないため、自分の本心や課題を安心して話せます。この「特別な協働関係」はマネージャーに驚くほどの勇気と自信をもたらすことから、本心から望む目標に到達することができるようになります。実際にメンタリングを受けた多数のマネージャーから「メンターだからこそ、自分と素直に向き合い、自分が望む本質的な変化を呼び起すことができました」との嬉しいお声をいただいています。

  •  
  • 「聴く」だけではない、ビジネスのアドバイザーとしても機能

マネージャーは部下に対して「聴く」だけでなくフィードバックやアドバイスを提供する必要がありますが、傾聴をしても「心を開いてくれない」「本音を引き出せているのかわからない」など、思うような結果を得られずに1on1に対する課題を抱えているマネージャーは少なくありません。

このような課題に対して、メンターは傾聴に加えてビジネスシーンで求められるコーチングとフィードバックを含む対話スキルを持つロールモデルとして機能し、かつ多数の企業メンタリングの経験を活かして課題を抱えるマネージャーの意識変革を促します。これにより、1on1の質の向上や社内コミュニケーションの改善が成され、上司部下の関係性の改善やワークエンゲージメントの向上、離職の防止につながり、その結果として業績向上に繋がっていきます。

【ブログ】1on1mentor (4)

 

  • メンターはクライアントの最良の理解者

メンターは、マネージャーとの信頼と協働関係を築きながら、マネージャーが本当に望む自分になるまでサポートを続けます。また、メンターはマネージャーの可能性を信頼しているからこそ「それは本当に望むことですか?」など、耳に痛いことを本気で問いかけます。例えば、マネージャーがプロジェクトの進行に疑問を感じたり、チームの意見が分かれた時に自分の判断を信じることができず、方向性を見失いがちな場合などに、このような問いかけは非常に重要です。

 

多くの組織では、マネージャーのタスクが増え続け、人間関係の構築が難しくなる組織の中で、心を開いて打ち明けることのできる特別な関係性を築くことは容易ではありません。だからこそメンターの役割が重要です。メンターは、マネージャーが1on1が苦手だと感じる課題に向き合いながらも、それだけではなく、マネージャーがとらわれている「これまでの自分」から「新しい自分」に変わる過程で最良の理解者となり、目標達成に向けて共に歩みます。

 

  • マネージャーのメンタリングへの抵抗も受け入れて、本質的な課題を引き出し、本来の「願望・望み」に気づけるよう支援

メンタリングへの抵抗は、もともと人に備わっている「心理的ホメオスタシスという自己変化への抵抗」から生じます。メンタリングでは、マネージャーが自らの内なる声に耳を傾け、変化に抵抗する心の壁と向き合う方法を探求します。

例えば「どうせ自分はでは変わらない、部下とのギャップを埋めるスキルがない」などの自信を持てない、自分を責める「エゴの声」や、部下に対する負の感情を持っている自分を認めて、理想の自分に変化することを許すことで、本来の「願望・望み」を実現する気づきや行動に繋がります。

 

メンタリングではストレスを感じることや本当の自分に向き合う怖れから逃げ出したくなることもあるかもしれませんが、マネージャーを心から信頼して、真剣にかかわるメンターとの協働により、自己信頼と勇気を取り戻し、目標に向かって着実に進むことができます。メンタリングは、マネージャーが自己の限界を超え、真のポテンシャルを引き出すための強力なツールです。

 

 

◼︎【事例紹介】マネージャーが本質的に変化するメンタリングとは?

 

メンターが本気で自分に向き合うように「自分も部下に向き合わないと何も変らない」と気づいた

 

メンタリングを導入した当初のマネージャーは、強いリーダーシップ意識を持ち、「こうあるべき」「部下には命令・指示を出すべき」という考えが根強かったため、仕事に積極的な人を「善」と見なし、消極的な人を「悪」とする二元的な見方が支配的でした。業績が低迷する中、何とか状況を打開しようとする「焦り」が、そのような姿勢を強めていました。

 

【ブログ】1on1mentor (5)

しかし、この「二元的なアプローチ」は、部下の内面に響く本質的な変化を引き出すことはできませんでした。部下は「自分はダメだと思われているから話しても無駄だ」と感じたり「先入観で判断され、話を聞いてもらえない」と感じて心を閉ざしてしまうのです。部下は上司が意識する以上に、上司の考えや感情を敏感に察知します。

メンタリングでは、まずマネージャーが自身の固定観念や信念が部下やチームを良い状態に導いていないことを認めることから始めます。マネージャーが部下との実際のやり取りを振り返り、メンターがその時の感情や反応を鏡のように映し出し、マネージャー自身が俯瞰的に見る機会を提供しました。これは、「現在の状態」と「新たな気づき」を得ていただくことが目的です。

 

次に、対等な立場で「部下とどのような関係を築きたいか」に焦点を当てたメンタリングへ発展させました。この過程で、マネージャーは固定観念として持っていた自己のエゴ(「こうあるべき」「部下には命令・指示を出すべき」の二元論)と向き合い、部下だけでなく自分自身に対する評価も二元的であることに気づきました。これにより部下の視点を捉えた本質的な「対話と協働」の必要性を認識し、自分が本当に目指したいマネージャー像に気づくことができたのです。

 

【ブログ】1on1mentor (6)

そして、マネージャーが自分の仕事に没頭するのではなく、営業から戻った部下に心からの感謝を伝えることで、自然と対話が生まれ、部下は営業の課題に対するヒントを得て自信を取り戻しました。コミュニケーションにおいて最も重要なのは、大義名分による機械的な行動ではなく、部下に対する真の好奇心と本質的な関わりです。

 

このように部下やチームの視点を捉えた「対話と協働」を通じて徐々に関係性を築き、結果としてチーム全体のワークエンゲージメントが得られ、業績向上につながりました。

 

◼︎ おわりに:プロメンターとしての想い

組織におけるメンタリングの経験を振り返り、私が特に重要だと感じたのは「即戦力となる社員に依存し、中長期的な『人材育成』をおろそかにしてしまった」という課題です。

人材が豊富だった過去の時代には、「強いリーダーが部下を導く」スタイルで組織は運営されていました。しかし、現代は各個人がリーダーシップを発揮し、自律的に行動し、他者と協力して目標を達成することが求められています。

この変化に適応するため、メンターはマネージャーの個性を尊重し、彼らが自己の能力を存分に発揮できるようにサポートします。信頼関係の構築と「メンタリングの関係」への協働コミットメントを通じて、クライアントは自身の真の願望や可能性を発見し、力強く目標に向かって進むことができます。

組織や個人を問わず、現在直面している課題や悩み、そして心の内をお聞かせください。メンタリングを通じてメンターとマネージャーが真剣に協働することにより、マネージャーは自己変革を体験し、新たなご自分を発見していただけることでしょう。マネージャーの目標達成を最大限にサポートする最良の理解者として最善を尽くし、ゴールまで共に歩んでいきたいと思います。

 

人材育成・エンゲージメント向上を実現 (1)-2

 

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