米Intel社で生まれ、GoogleやAmazonといった名だたる海外企業で導入されてきた、目標管理の手法「OKR(Objectives and Key Results)」。
OKRは、組織全体に共通の目的意識と連帯感を生みだし、従業員のモチベーションを高め、困難な目標達成を実現するための強力なシステムです。
一方で、OKRは導入するだけですべて上手くいくような魔法のツールではありません。その効力を発揮させるためには、OKRを正しく理解し、粘り強く運用・改善を続けることが不可欠です。
ピープルマネジメントツール「Wistant」では、Webメディア「SELECK」協賛のもと、OKRの基本から実践のコツ、国内企業の実例までを無料のガイドブックにまとめました。
本記事では、その「第一章」を一部編集し、OKRの特徴とメリット、従来の目標管理との違いや導入事例について、特別に公開いたします(これだけでもかなりボリュームがありますし、OKRの基本を理解することができます)。
OKR運用を成功させるための参考資料として、ぜひご活用ください!
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「OKRって何?」特徴とメリット、従来の目標管理との違い
・OKRの基本・メリット
・OKRとMBOの違い
・OKRの導入が適している企業
・OKRの導入で陥りがちな「落とし穴」
・OKR導入の「事例」を知る
「OKRパーフェクトガイド」で提供している情報について
OKRの基本・メリット
OKRとは、「目標(Objectives)」と「主要な結果(Key Results)」の頭文字をとった略語です。簡単に言うならば、目標とその成果を測る指標のことを意味します。
目標(O)は、何を達成したいか? を示します。例えば「2025年までに会社全体の売上を1兆円にする」といったものです。主要な結果(KR)とは、Oが達成したかどうかを測る基準です。きちんとモニタリングでき、誰から見ても達成できたのかを測定可能である必要があります。
例えば「2025年までに会社全体の売上を1兆円にする」というOに対するKRには、「新規ユーザーをXX人獲得する」「1人あたりの課金額をXX円にする」といったものが設定されます。そしてOKRでは、会社からチーム、チームから個人へと、すべての目標が紐づく形で設定されます。
つまり、すべての従業員の目標が、会社の戦略と紐づきます。(この方向性の一致を「アラインメント」と呼びます。)
このアラインメントを始めとした以下4つの要素が、OKRの特徴でありメリットになります。
• 会社から個人までの目標がアラインメントされ、組織全体に一体感と連携を生む。
• 会社の戦略実行における優先事項をフォーカスし、コミットする。
• 進捗を細かくトラッキングし、状況に応じて目標を修正・変更する。
• 野心的な目標を設定し、失敗を許容することで、傑出した成果の創出を促す。
上記のような特性から、OKRを従来の評価や人事考課のための「目標管理ツール」と同じように捉えてしまうと、解釈のズレが生じるかもしれません。その目的は、「目標の管理」ではなく「会社の戦略実行」です。
OKRは、限られたアセットを最大限に活用し、飛躍的な成長を実現するためのシステムであり、そのためのコミュニケーションツールでもあります。
次に、OKRと比較されることの多い目標管理手法「MBO」との違いから、より詳しくOKRを説明していきたいと思います。
OKRとMBOの違い
MBO(Management by Objectives)は、経営学者のピーター・ドラッカーが1954年に提唱した、目標管理の手法です。1960年代から海外の先進企業で広まり始め、やがて日本にも上陸し、今日に至るまで多くの企業が取り入れてきました。
元々、ドラッカーが提唱したMBOの思想は「自己統制による管理」であり、OKRに近しいものでした。しかし、企業によって実践されてきたMBOはトップダウンの管理手法であることが多く、日本では人事評価制度と紐づくものが多く見られます。
よくあるOKRとMBOの違いは、以下の通りです。
OKR | MBO | |
目的 | 組織の戦略実行 | 報酬や評価の決定 |
成果の測定 | SMARTに基づく | 目標や組織により様々 |
サイクル | 短い(四半期・月次) | 長い(半期・年次) |
目標の共有範囲 | 全社 | 限られたメンバー間 |
達成の期待水準 | 60〜70% | 100% |
まずMBOとの大きな違いは、OKRは「組織の戦略実行にフォーカスされた目標である」ということです。
OKRでは、業務範囲を網羅した形で目標を設定する必要はなく、評価・報酬にも直接的な連動はさせない方がよいとされます。そしてその達成水準は、60~70%が推奨されます。
MBOでは、達成水準100%の目標を設定するのに対して、OKRでは「ムーンショット」と呼ばれるような野心的な目標を設定します。つまり、30~40%の未達は計画に織り込み済みのフレームです。
また、Oの成果を測るための指標は「SMARTの法則」に適う必要があります。
さらに、目標の共有範囲やサイクルについても違いが見られます。MBOは個人単位で設定されることが多く、クローズドな情報になりがちな一方、OKRはすべての目標が会社にオープンにされるため、事業部を越えた連携を生みます。
また、MBOの多くが半期や年次の評価サイクルに基づいて運用される一方で、OKRは四半期あるいは月次の短いサイクルで運用することが推奨されます。
このように、野心的で意欲を掻き立てるような目標を立て、測定可能な指標に基づいて進捗をトラッキングし、振り返りと軌道修正のサイクルを早めることで、OKRは事業の成長スピードを高めます。
Q:なぜ、野心的な目標を立てる必要があるの?
1968年に「目標設定理論」を提唱したエドウィン・ロックによれば、「多くの努力や困難、時間的制約のある目標の方が、楽な目標よりもパフォーマンスを高める」「具体性のある困難な目標の方が、曖昧な文言の目標よりもアウトプットの水準が高くなる」と言います。
達成水準100%の目標を達成するよりも、150%の目標を目指して70%の未達に終わった方が、結果としては高い地点へと到達することができます。OKRは、優先事項にフォーカスし、高い目標に最速で到達するためのツールだと言えます。
OKRの導入が適している企業
OKRの導入は、すべての組織に効果的なのでしょうか? その答えは、イエスでもあり、ノーでもあります。
OKRは、どの企業規模の組織にも、メリットがあります。例えば、スタートアップのような小規模な組織では、限られたリソースをどこに集中させるかを定め、企業の成長を後押しするツールになります。
国内でも、急成長中のスタートアップでの導入が増えています。また、社員が数百人程度の中規模の会社では、OKRは会社のビジョンや戦略を現場に伝え、業務を遂行するための共通言語となり得ます。
さらに大企業であれば、すべての目標を可視化することで、部門や個人間における業務の重複を減らし、組織の一体感を強くします。
一方で、OKRは手段であり、それを受け入れる「企業文化」の土台が不可欠です。OKRにフィットする企業文化の特徴としては、
• 中央集権的でなく、権限の分散が進んでいる。
• あらゆる情報をオープンにし、誰でもアクセス可能な透明性を持つ。
• データや事実に基づく、迅速な意思決定を重んじる。
•常に高い目標を目指し、さらなる成長を求める志向性がある。
といったものがあります。また、上記のような文化が今はなくても、OKRを通じて組織の在り方を変えていくことも不可能ではありません。
OKRが組織に浸透すれば、情報がオープンになり、言葉よりも行動とデータが重視され、誰が組織にとって有益なインパクトを与えているかが可視化されます。事実、成長企業の多くが、上記の企業文化を持っています。
OKRの導入で陥りがちな「落とし穴」
さて、OKRを導入する際、何に気をつけたらよいのでしょうか? よくある「落とし穴」と解決策をご紹介します。
① OKRの達成度を、評価と直接的に紐付けてしまう
OKRのコアは、目標のフォーカスとストレッチにあります。そのため、OKRの達成度と評価は、直接的に紐付けるべきではありません。
よくある失敗が、OKRの達成度を評価と直接連動させることで、メンバーが失敗を恐れ、野心的な目標を立てなくなってしまうことです。望ましい評価の考え方としては、OKRの達成度ではなく、OKR達成に向けたアクションや、OKR外の業務でのアウトプットを総括して、評価の対象にすることです。
また、適切な評価をするためには、1on1や360度フィードバック、セルフレビューなどを通じて、評価のための「事実情報」を集める仕組みを作ることが大切です。
② OKRの意義を伝えずに導入してしまう
「さぁ、OKRを始めよう!」と経営や人事から号令をかけても、OKRの導入はうまくいきません。そもそも「なぜOKRを取り入れるのか?」という意義や背景を、メンバーが耳を傾けるまで繰り返し伝えることが重要です。
もし、これまでMBOに近い形で目標を管理していた場合、OKRの導入は大きなパラダイムシフトになります。意義などを理解せずに始めてしまうと、OKRの特徴的な思想(野心的、フォーカス、アライメントなど)が力を発揮せずに終わってしまいます。
これについては、先述したOKRの特徴をふまえて、自社の目指したい姿や価値観、現在の課題などに照らし合わせながら「なぜOKRなのか」を説明するのがおすすめです。
③ OKRを導入するだけで、すべての問題が解決すると考えてしまう
最後に「OKRを導入すれば、目標周りの問題がすべて解決する」という思い込みは、よくある落とし穴です。
OKRは、導入してすぐに上手くいくような簡単なシステムではありません。たとえば、OKRの「設定」だけでも、以下のようなスキルが必要になります。
• 戦略を理解し、自分の業務に落とし込む能力
• 具体的でワクワクするようなObjectivesを設定する能力
• Oに対して、達成かどうか測定可能なKey Resultsを設定する能力
• やるべきことを明確にして、それ以外を「捨てる」勇気
こうした目標設定のスキルや、目標を意識して業務を改善していく自律性、進捗をトラッキングする仕組みなどの正しい運用があってこそ、OKRの効力が発揮されるようになります。
この解決策としては、粘り強く運用の改善を続けることです。OKRのサイクルが終わるごとに、「目標設定に改善余地はないか」「進捗の追い方に問題はないか」などを振り返り、反省を次に生かすことで、OKRが真の価値を発揮します。
OKRの導入の「事例」を知る
上記のようなOKRの特徴がわかったところで、実際の導入事例を見てみましょう。
例えば、WebメディアSELECKで過去取材した株式会社AbemaTVでは、メンバーのパフォーマンス最大化を目的として「アラインメント」を重視し、OKRを導入したといいます。
AbemaTVの開発組織においては、各メンバーのパフォーマンスを最大化することにプライオリティを置いて、組織を作っていきたいという思いがあったんです。そのための手法として、目標管理の方法を刷新し、2017年の4月から「OKR(ObjectivesandKeyResults)」を導入しました。
OKR導入前は、すでに決まっている事業目標を各チームリーダーにまず伝えて、彼らがメンバーと個人目標を設定し、半期ごとに評価をしていました。事業目標はサービスごとに異なりますが、例えば、売上やアクティブユーザー数といったいわゆるKPIです。以前のフローですと、個人目標が各チームリーダーの力量に依ってしまう部分がありました。また、事業目標とリンクしない個人目標が設定されることもあり、そうすると、メンバーのパフォーマンスを最大限引き出すことが難しかったんです。
ですがOKRを使うと、開発局としての事業目標と個人目標をしっかりとリンクさせることができます。
参考記事:全員の目標をオープン化!AbemaTVの、エンジニアのコミットを最大化する組織づくり
※OKRパーフェクトガイドでは、OKRの導入事例を上記に加えて3社ご紹介しております。
いかがでしょうか? 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ここまでが、OKRパーフェクトガイドの第一章の内容になります。実際に提供している情報は、下記の通りです。
1.「OKRって何?」特徴とメリット、従来の目標管理との違い
・OKRの基本・メリット
・OKRの導入が適している企業
・OKRの導入で陥りがちな「落とし穴」2.OKRを設定しよう!ポイントを徹底解説
・OKR設定プロセスの全体像
・目標(O)と主要な結果(KR)の設定
・コミットラインと健全性指標(ヘルススコア)の設定3.「OKRを設定して終わり」はNG。トラッキングとCFRが成功の鍵
・トラッキングの重要性
・OKRの成功を高める「CFR」
・チェックインミーティングとウィンセッション4.OKRは、振り返り、継続することで真価を発揮する
・OKRの採点の仕方
・定性評価による振り返り5.OKR導入企業の実例から学ぶ【3社の事例】
6.ピープルマネジメントツール「Wistant」によるOKR運用法
付録:すぐに使える!「OKR設定チェックリスト」
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