伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は「Challenging Tomorrow’s Changes」をスローガンに掲げ、システムの開発、アウトソーシング等のトータル・ソリューションを提供しています。
今回は、人材育成・エンゲージメント向上につながる1on1の仕組みを作るために、Wistantを導入した背景や、外部メンターサービス(※)の活用、導入後の変化などについて伺いました。
※ 外部のメンターが実際の1on1を代行することで、1on1実施の負担を減らすサービス。プロのメンターと1on1をすることで、エンゲージメント向上や管理職の育成を実現。
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▼今回お話を伺った方
・情報通信事業グループ 情報通信第1本部 技監 中村 寛さん(写真左)
・情報通信事業グループ 情報通信第1本部 プラットフォームテクノロジー第1部 課長 渡部 友也さん(写真右)
ーーはじめに、お二人の簡単な自己紹介をお願いします。
中村 私は、情報通信事業グループの第1本部で技監をしてます。技監とは、いわゆるCTOに近いイメージのポジションで、技術を中心に企業価値を向上させるための取り組みを行うことが役割です。
渡部 僕も中村さんと同じく情報通信第一本部のプラットフォームテクノロジー第1部に所属し、課長として勤務しています。日々チームビルディングについても考えつつ、僕自身もいち技術者としてプロジェクトに携わっています。
中村 私は、2016年ごろからエンゲージメントを向上させることを目標に組織と向き合ってきました。
当時部長として見ていた組織の規模が単体で250名ほどまで拡大していたこともあり、組織内の状況を把握しづらくなっていました。ただ、なんとなく人と人との関係性が希薄になっていたり、技術的にも視野が狭くなっていて、活気が薄れている感覚があったんです。
そこで、組織を細分化して人間関係を改善したところ、実際に社内が活気付きチームの大小とエンゲージメントが関係していることに気づいて。
その後、渡部が所属している部の部長としてこの部署に来たのですが、やはりメンバーの元気があまり無い印象がありました。しかし、すでに細分化する必要のない小規模なチームであったため、他の手を打つ必要があり何を改善すべきか見当がつかず悩んでいました。
渡部 現場で感じていた課題としては、ここ2、3年はコロナ禍でリモートワーク主体に移行していたこともあり、従来の「会社で見て、聞いて、学べ」のような会社全体で育てる育成論が通用しなくなっていたことが挙げられると思います。その結果、育成方法がマネージャーのやり方と力量に属人化してしまっていたんです。
加えて、CTCでは、他社と比較しても派遣社員の割合や依存度が非常に高いという特徴があります。
彼らの育成やキャリアプランの確立も正社員と同等に重要だと考えて教育を実施していますが、キャリアを積んで成長したとしても帰属意識を高く保つことができず、配置換えまたは転職してしまう人が多い状況で。その結果、ここ数年は人の入れ替わりも激しく、効果的かつ具体的な施策を打つ必要があると感じていました。
そこで、世の中的にも育成やエンゲージメント向上の観点で注目を集めていた「1on1」を試しにやってみようと思ったんです。
ーー1on1ツールを探していた際に、他社のツールも検討されていたとお伺いしています。
渡部 はい、他のツールも検討しました。そもそも1on1をやっていなかったので、まずはメンバー間の調整やフィードバックを効率良く、かつ低コストで回せる仕組みを作る必要があると思い、1on1ツールを探していたんです。
また、属人化されたマネジメントが原因で適切に1on1や育成が行われていない人を可視化して改善していく必要があると感じていたので、1on1の満足度が組織レベルで定量的に可視化できるツールを探していました。
しかし、「1on1ツール」というと、1on1をいかに効率よく回すかのツールが多いですよね。その中で、Wistantは「パフォーマンスを最大化する」ことに主眼をおき、1on1の実施だけでなく目標設定やフィードバックなどのアクションも含めてマネジメント領域をまるっと管理できる点に魅力を感じました。
また、HR系のツールは人事側が使う想定で作られているものが多い一方で、Wistantは現場のメンバーの使いやすさに配慮されたUI・UXで、利用時のイメージを具体的に描くことができ、導入を決めました。
中村 実際に質の高い1on1をすることは簡単ではなく、1on1が単なる面談になってしまうケースは多いと思います。
それを避けるためにも、会話の中で出てくる様々な情報を蓄積させることが重要で、その結果として目標の達成による成長や、よりよい1on1への改善に繋がっていくと思います。
1on1を導入したタイミングから、実行をサポートしてくれるツールがあったことは非常に価値があったと思いますね。
ーーWistantを導入された際、現場の方々から「戸惑い」などはなかったのでしょうか?
渡部 特になかったですね。僕のチームは、新しいツールを導入すると皆すぐにボタンを押したがる文化があるので、勝手に使いこなしてました(笑)。WistantのコンセプトもUIの導線も非常に理解しやすいですし、操作説明会なども一切行わずに導入して1ヶ月も立たずに使いこなしていた感覚ですね。
ーー私たちとしても、Wistantの詳細をお伝えする前に活用されていたので驚きました(笑)。
渡部 ツールを導入すると形骸化してしまうケースもありますが、普段使っているコミュニケーションツールの「Slack(スラック)」に1on1の実施や目標の進捗管理を促す通知が飛んでくるので、絶対に忘れないんですよね。
会社から「1on1をやりましょう」という指示があるケースは多いと思うのですが、現場での調整や時間の拘束など、色々な障壁が蔑ろにされているケースが多いので、こういったツールは積極的に活用して1on1実施のコストを下げていくべきだと改めて感じました。
ーー現在では、他の部署でもWistantを利用してくださっていて嬉しいです。どのようにしてWistantが広がっていったのかお伺いしても良いですか?
渡部 僕が定期的に中村さんにWistant導入後の経過を報告していたことで、中村さんがWistantに可能性を感じてくれた点が大きな要因だと思います。
1on1を継続していると、「効果が出ているかもしれない」というちょっとした変わり目があるんですよね。そのタイミングで、「メンバーの行動に良い変化の兆候があった」であるとか「1on1は思ったよりも時間が拘束されてしまう」など、良い面も悪い面も包み隠さず伝えていました。
中村 渡部との議論を通じて、僕の立場からも確かに効果が出ていることは実感していたので、他の部署にもWistantの存在を伝えていった形ですね。
渡部 ただ、1on1って、やってみると思っていた以上に難しいんですよ(笑)。
Wistantを使って1on1をスタートさせるまでは早かったのですが、真剣にやってみたら想像以上に大変でした。準備と実施に時間がかかりますし、1on1の質をどう上げたら良いのかもわからない。
というのも、1on1の基本である「傾聴」をマネージャーが行うのはかなり難しいと考えています。マネージャーはメンバーを指導する役割を担うことも多いため、「傾聴」というものを本で読んだり研修では学んではいるものの、実践をすることは難しいと感じました。
ーーとはいえ、他の業務もこなしながらマネジメントをするとなると、ご自身でスキルを身につけて…という時間もないと。
渡部 正直、現実的では無いですよね(笑)。プレイヤー時代は担当業務と限られた後輩の育成だけを考えていればよかったのですが、マネージャーになってからは部下のエンゲージメントやモチベーション、キャリア形成の支援なども役割に含まれてきます。さらに、案件や業務も必要に応じてこなしているので時間を取ることはほぼ不可能ですね。
僕自身、部下16人分の1on1を隔週で30分ずつ実施していたので、一ヶ月で16時間を1on1に使うことになるんですよね。時間的なコストだけでなく、話す内容を考える時間や話した後に対応策を考える必要があり、精神的な労力もかなり負担があることに気づきました。
けれども、1on1自体をやめる選択肢は無かったですし、僕らが1on1のプロになれるかというと難しい。そこで、新たに「外部メンターサービス」を導入しました。
ーー外部メンターサービスをどのように活用してくださっているのか、お伺いしても良いですか?
渡部 外部メンターサービスは、プロのメンターの方々が実際に1on1を代行し、負担を軽減してくれるWistantのオプションサービスです。従業員エンゲージメントの向上や管理職の育成も兼ねて導入しました。
1on1における支援は「業務支援」「内省支援」「精神支援」の3つがあるとされていますが、対象メンバーに対して業務支援以外である「内省支援」「精神支援」観点の1on1を隔週30分、月2回実施してもらっています。
メンバー側から守秘してほしいという指定がある情報を除いて、1on1の内容をレポートとして共有してもらえるので、チーム内で認識のズレが起きていないかを確認できるのもありがたいですね。もしズレがあったとしても、軌道修正が行いやすくなったと思います。
ーー社外の人に話を聞いてもらう…というのは新感覚かと思いますが、社内の反応はどうですか?
渡部 「思いのほか、素直に話せた」という声が多いですね。メンバーが、マネージャーに対して「これだけ多くの人と1on1をしてると大変だろう」と実は気を使わせてしまっていたり、様々な理由から本音を話せていない場合もあると思います。
外部メンターサービスを利用することで、相手が「業務上関係性のない社外の1on1のプロ」であると認識している方が、気持ちの障壁がなく素直に話ができているのだと思います。
中村 本来は1on1を通じて業務や行動の振り返りを行う必要がありますが、どうしても相手が「上司」だと壁を作ってしまったりして、振り返りまで辿り着くのが難しいんですよ。本音や弱みをなかなか出しづらく、心理的負担を感じるケースもあると思いますからね。その壁を少しでも取り除けるという点でも、外部メンターは効果的だと思います。
渡部 日本の文化として、優秀なプレイヤーがマネージャーになるケースが多いと思いますが、優秀なプレイヤーが優秀な育成者ではないことも多いと思っていて。しかし、そのギャップを本人の努力で埋めさせようとするとその人の良さが活かせないケースも有ると思っています。また、単に「時間が取られるから1on1をやりたくない」というマネージャーも一定数いると思うので、育成業務の一部をプロに委託するというのは一つの形だと思っています。
中村 プロの1on1を受けることは、理想的な1on1のやり方を学ぶ良い機会になるのではないかとも感じていて、外部メンターサービスの利用者が将来メンターになった際に、学んだことを活かして1on1を実施してくれることも期待しています。
渡部 「本当の傾聴」を体験する機会ってほとんどないんですよね。私自身も3ヶ月間外部メンターをつけてもらったのですが、プロの傾聴を体験して、「あ、これが本当の傾聴か」と気づけたのが非常に有益でしたね。
中村 今回の取り組みを通じて私たち自身が学んでいることは、1on1の正しいやり方だけではなくて。空いた時間でそれらを活用できる他の場面を考えたり、メンバーの成長から色々な気づきをもらっていると思います。
渡部 そうですね、教育に対する考え方も変わりました。昔は「この資格を取得しましょう」というシンプルな教育も一般的だったのですが、情報が溢れている現代において、今後はコーチングが教育の一つとして選択肢に加わるのではないかと思います。研修を一通り受けきった中堅層以上の人に対しては、より効果的だと思いますね。
ーーWistantの導入後、組織内に具体的な変化は見られましたか?
中村 半期ごとに実施しているエンゲージメントサーベイの結果を見てみると、Wistantの導入から半年後の集計では、スコアが大幅に向上し、上位にランクインする項目もガラリと変化していました。
具体的には、エンゲージメントに影響を与える項目としてこれまで上位に入ることがなかった「仕事で活力を得ている」「CTCでキャリア上の目標を達成できている」という二つの項目のポイントが顕著に高くなっていて。
これはWistantや外部メンターサービスを導入したことで1on1を仕組み化し、各メンバーが自走できる環境が整った影響が大きいと思っています。このような結果をみると、やはり非常に嬉しいですね。
渡部 最近感じるのは、メンバーの成長が早まっている感覚があります。 また、帰属意識が高まったと感じる瞬間も増えました。ただ、正直なところ、どの要素が組織状態を良くしたのかは、様々な要素があると考えています。
その中でも、一番良かったなと思うのは、Wistantや外部メンターの取り組みによって変化が生まれ、中村さんが現場に対して「ありがとう」と伝えるサイクルができたことだと思っていて。お互いに、取り組みの内容や気持ちを明示する機会ができたことが良かったですね。
中村 そうですね。こういった取り組みは、私たちの意図や感情が現場に伝わらないと継続が難しい部分もありますからね。
実は、過去の育成方針では「エンゲージメントが高いメンバーだけをピックすべき」という考えもあったのですが、やはり全員のエンゲージメントが高くてこそ会社だよねという認識に変化していて。1on1を通じて動機付けを行い、全員が成長実感を得ながら仕事を楽しんでもらえたらいいなと思います。
ーー素晴らしいですね。少しずつ成果が出てきているようで何よりです。
ーー最後に、ここ数ヶ月の取り組みを通じて感じられていることを教えてください。
中村 私からすると、やっと始まったばかりで、まだまだこれからなんですよね。この数ヶ月でまだ取り組めていない人もいるので、その辺りを改善しながらより多くのデータを集めて、本当に改善が出来ているのか?を検証できるところまで目指したいです。
ただ、振り返ると、本施策に共感していたマネージャーたちはみんな取り組みに前向きで、非常に良い空気感でしたね(笑)。
渡部 そう言っていただけると嬉しいですね(笑)。努力をする人間は役職など関係なく伸びると思いますし、僕たち自身も、常に成長し続けなければと思いますね。
中村さんと同じく、この取り組みはまだまだ途中だと思っているので、より具体的な改善案を提案できるようにデータを溜めていくことが次の課題です。そうすることで、新たな形の1on1や、外部メンターの仕組みも生まれるのではないかと期待しています。
引き続き、良い変化を他の部署にも少しずつ共有しながら、同じ問題意識を持って取り組んでくれる仲間を増やしていきたいと思います。
ーー渡部さんはすでに実践してくださっていますが、今後、他のマネージャー層の方々も外部メンターサービスを利用してくださるとお伺いしました。
渡部 「傾聴とはこういうものだ」という話を聞いて、単純に興味を惹かれて始めてみたんですよね(笑)。普段1on1を受けていない上位層が、外部メンターの威力を通じて自分たちの育成方法を見直すきっかけにもなると思います。
中村 私も受ける予定なのですが、非常に楽しみですね。やはり、教科書に書いてあることは実践するまでなかなか理解しにくいので。「自ら体験してこそ」はエンジニアの真骨頂ですから。
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ーー本日はお忙しいところ、素敵なお話をありがとうございました!