ARISE analyticsは、KDDIが85%、アクセンチュアが15%を出資するジョイントベンチャーとして2017年に設立。350名以上のデータサイエンティストを抱える国内最大規模のデータサイエンス企業です。高い技術力と最先端のデータサイエンス技術を用いて、お客さまの事業にイノベーションを起こし、お客さまと共に産業・社会・文化の進展に貢献する価値創造者を目指しています。
今回は「働きがいのある会社」にも選出された同社が「働きがい」や「人材育成」の土台として大切にしている、1on1の運用や成功の秘訣、1on1ツールWistantのご活用について詳しくお伺いしました。
▼今回お話を伺った方
・Chief Workstyle Officer 佐々木彰様(写真左)
・人事Unit 制度労務Team 宮河恵様(写真右)
※以下敬称略にて記載
ーーはじめに、お二人の簡単な自己紹介をお願いいたします。
佐々木:ARISE analyticsの佐々木と申します。私は「CWO(Chief Workstyle Officer)」として「世界一働きがいのある環境を創る」をミッションに掲げており、従業員の働き方に関わる全てに対して責任を持っています。人事領域全般はもちろんですが、「オフィス環境」などの物理的な環境もそうですし、コミュニケーションの取り方まで「働きがい」に関する取り組みを幅広く担っています。
宮河:ARISE analyticsの宮河と申します。私は2021年7月に入社して以来、制度・労務チームで勤怠管理や給与計算、年末調整などを担当しながら、パルスサーベイの実施や1on1の企画・運営を担当しています。
佐々木:いま、ARISE analyticsではD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に関する取り組みを強化しており、新しくベストパートナー休暇制度(結婚休暇の定義を広げ、事実婚や同性婚など、様々なパートナーシップも対象に休暇を取得できる制度)や、お子さんが18歳まで育児短時間を取得できる制度がスタートしています。従業員の意見やアイデアは、1on1やエンゲージメントサーベイ、従業員へのアンケートで取得し、制度に反映しています。こういった従業員の声を集める機会は、他の会社と比較してもかなり多いんじゃないかなと思っています。最短で1ヶ月で実現する制度・施策もあるくらい、ARISE analyticsではスピード感を重視しています。
ーー1on1の運用支援ツールとしてWistantを導入いただいたのは、2021年でしたね
佐々木:そうですね。1on1については2017年に会社を設立した当初から会社全体の仕組みとして導入していました。ARISE analyticsはKDDIとアクセンチュアの合弁会社として立ち上がった背景があり、お互いの文化が一つの組織の形になるまでは、1on1でも目線が合わないとか、考えていることがうまくすり合わないとか、これまで育ってきた企業文化の違いによる難しさがありました。1on1を始めたばかりのころは上司(メンター)によって1on1の質も頻度も、話す時間も違ったので、部下側の悩みや話したいことをきちんと吸い上げられているのか分からない、という課題を感じていました。
会社としても1on1の中で話してほしいことや、頻度・時間をしっかり定型化して、1on1の質を統一化するために、システム化を行う必要性を感じ、2021年にWistantを導入しました。
宮河:1on1を始めた当初は1on1の実施率が5割〜6割くらいで。「1on1をやってください」と呼びかけてはいたものの、1on1の実施がきちんと浸透していなかったんです。1on1を何のためにやるのか、誰のための時間なのか、という理解が従業員に浸透していなかったため、社内報等で度々アナウンスしました。
Wistantではトピックを柔軟に設定できる点や、過去ログの表示、実施後アンケート等の機能があり、より1on1を充実したものにできると思います。1on1ツールを使用することで、話したいトピックを事前入力でき、本人・上司双方で共有し目線合わせできる点が便利だと思っています。
ーー今では1on1の実施率がほぼ100%を達成され、それを維持されていらっしゃいますね。
宮河:そうなんです。ここ2~3年ではほぼ100%に近い数字を維持できています。月に1回の1on1を定着させるため、定期的な情報発信に加えて、新入社員向けのオンボーディングでも1on1の必要性を丁寧に伝えています。また、1on1のメンターを担当する上司にも、月に1回の実施は上司の義務として「日常的な業務の1つとして取り組んでください」とお伝えしています。Wistantのリマインド送信機能は未実施者へ一斉送信で通知ができるので、運用部隊(労務担当)としてとても有難い機能です。
佐々木:ARISE analyticsでは経営層も1on1に強い関心を持っています。毎月1on1の実施状況や充実度のデータをWistantで抽出し、月次で経営層向けの報告会を開催し、情報共有しています。組織ごとの1on1の実施状況を確認できるので「この組織では全然実施できていないから、やろうね」とトップダウンで1on1の実施促進も行っています。こうした1on1に関するコミュニケーションが活発なことで、実施率がしっかり上がってきたんじゃないかなと思います。1on1を通して強制的に対話する機会を作ることは、ARISE analyticsにとってとても重要だったと思いますし、今の一体感や組織としての考え方の定着に繋がったと感じています。
< Wistantの「1on1実施率分析画面」サンプルイメージ >
ーー経営層の方も1on1に高い関心をお持ちなのですね。
佐々木:そうですね。我々の会社の事業特性上「人に対してフォーカスする」ことが非常に重要だと思っています。データサイエンティストである弊社の従業員は会社の大事な商材でもあり、いかに優秀な人を採用し、育成するかが事業構造上とても重要です。ARISE analyticsに参画してくれた人に対して、成長機会を提供したい、成長を支援したい、という思いが非常に強く、そういった取り組みの一環として1on1もあると考えています。
宮河:私たちのような1on1を運用している側から見ていても嬉しいのですが、1on1の充実度が非常に高いんです。充実度を低くつけている従業員は5%に満たない程度です。
佐々木:1on1のメンターを務める上司に「部下のエンゲージメントをあげるのが役割だ」という意識が染み付いているんです。人事制度としても、部下の育成を担うことはもちろん、周囲のメンバーの育成に貢献することをすべての従業員に求めています。そのため、育成という観点においても1on1は組織にとって必須のもの、として認識されています。
宮河:今では月に1回の1on1が定着していますが、やはり会社側から声をかけることが重要だと思っています。新入社員や若手のメンバーにとって、上司が自分のために時間を割くことに萎縮してしまうこともありますし、実際にそういった相談を受けたこともありました。会社として「月に1回1on1をやることがルールだよ」と声を掛け続けることで、若手からも上司に声をかけやすく時間を取りやすい環境を作っています。実際に私も上司が佐々木なので、自分のための1on1の時間をもらえることはありがたいですし、仕事に関係のない話題でもなんでも話せる1on1がある、この環境を誇らしく思います。
佐々木:1on1で話すことを付け加えると、上司から従業員に対して社会・顧客や組織に対する貢献を伝える場として位置付けています。上司が従業員の活躍や会社への貢献をフィードバックすることで、従業員は自身の貢献を実感し、従業員の「働きがい」向上に大きく寄与します。
ーーWistantでは1on1の充実度や実施率のデータを活用されていますが、他のエンゲージメントサーベイによる調査結果を複合して活用されているのでしょうか?
佐々木:エンゲージメントサーベイは半年に1回実施していて、組織ごとに結果を比較分析しています。エンゲージメントサーベイの結果が1on1のスコアとリンクする部分が結構あって、例えば1on1の充実度が低い組織ではエンゲージメントスコアも低いなど連動していきます。エンゲージメントサーベイは組織単位、または会社全体の傾向を把握するデータとして捉えていて、一方の1on1のスコアはもっと解像度高く、個々のレベルでの問題を把握するデータとして捉えています。どちらも非常に重要な指標です。
佐々木:今、組織がどんどん大きくなって経営層と従業員が直接コミュニケーションをとる機会が少なくなってきています。そうなると断片的にしか情報が伝わらずに認識にズレが生じることも懸念されます。それを解消するために1on1でも経営層が考えていることを正確に従業員に伝えて、従業員からの意見があれば経営層に伝えていくことが重要だと考えています。そのため、今後のARISE analyticsにとって、経営層と従業員の橋渡し役を担い次の経営を任せていく中間管理職の育成は非常に重要です。彼らが1on1という場でしっかりと役割を果たせるかどうかが、今後の会社の成長に繋がっていくと考えています。
1on1での対話を通して、会社の文化や目指す方向性のメッセージが自然と浸透していくような仕組みになってほしいなと思っています。そうすることで、従業員がみんなで同じ方向を向いて、縦・横・斜めに人が繋がりあいながら、会社というピラミッドを大きくしていきたいと考えています。
ーー本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました!